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五能線と津軽の旅

遅めの夏休みをとって津軽半島のあたりを旅してきた。今年の春に乗るつもりだったのに当日直前になって運休してしまった「リゾートしらかみ」に乗る旅の再チャレンジでもある。旅の間はずっと天気がよく、訪れた場所の風景はどこも素晴らしかった。

1日目: 秋田へ

リゾートしらかみは青森駅と秋田駅から発着しているので、これに乗るにはまずどちらかの駅まで行かなければならない。今回はまず秋田に行くことにして東京駅から秋田新幹線に乗車した。まっすぐ秋田まで行くと遠くて疲れてしまうので、途中で久しぶりに田沢湖に寄ってみることにした。

10時過ぎに田沢湖駅に到着。到着の直前まで曇り空が広がっていたがちょうど雲の切れ間から青空が見えるくらいに回復して幸先がよい。さっそく駅で田沢湖一周バスのチケットを買う。前日に土砂崩れがあった影響で一周ではなく「たつこ像」がある潟尻で折り返しとのこと。これはやむなし。すぐにバスが到着して進行方向右側の席に座る。以前の訪問で右側だと景色がよく見えることを覚えていたのだった。

しばらくバスにゆられて田沢湖畔を眺めつつ潟尻のバス停に到着。折り返しまで30分 (通常は20分) とのことでしばらく景色を眺めて写真を撮る。今日は風が強くて湖面は波立っている。以前来た時の記憶とは違って水位が低く、歩いて「たつこ像」まで行けるようになっており多くの観光客が記念写真を撮っていた。水量は季節などで変わるんだろうか

田沢湖

このまま帰るのではちょっと物足りないので帰りは湖畔のバス停で途中下車して、しばらくのんびりと湖畔を歩いたり、みそたんぽ (きりたんぽに味噌を塗って焼いたもの) を食べたりした。楽しい。秋田によく出没するという噂の「ババヘラアイス」も来ていて興味はあったが今回はやめておいた。

後続のバスで田沢湖から戻ってきて再び秋田新幹線に乗って秋田へ。途中の車窓では黄金色の稲穂が広がる風景が見られた。秋だねえ。このあたりはもう収穫のタイミングらしく、すでに刈り取られたあとの水田もたくさんあった。

秋田に向かう新幹線からの車窓

15時前には秋田駅に到着。時間はまだたっぷりあるので、まずはねぶり流し館に行って竿燈を見学する。秋田の地元では「ねぶり流し」と呼ばれてきたもので「竿燈」というのは明治以降のわりと最近の呼び名らしい。こんな大きな竿が何本も出てくるのは迫力があるだろうということで、いつか祭りを見に来ることにしたい。竿燈の歴史に触れたところで、併設されている旧金子家住宅も見学。古い商店の雰囲気がそのまま残っていてこちらもよかった。

さらに千秋公園まで歩く。元は久保田城跡で、展示館を兼ねた復元された櫓があるとのことだったので登る。知らない場所に来た時はとりあえず高い場所に登るにかぎる。天気がよかったので櫓の上からは秋田港や遠くの山々まで見渡せた。実によいところ。

千秋公園の櫓からの眺め

歩き回って疲れたので駅前のホテルにチェックインして、夕飯は秋田駅で比内地鶏の親子丼を食べた。うまい。駅で明日から使う五能線フリーパスと指定席券を発券してから、売店でお土産も物色。今回の秋田土産は「きりたんぽの里」にした。

2日目: 五能線と五所川原

この日も朝から快晴。8時前には秋田駅に出てきて今日の運行状況を確認する。前回はここで運休の知らせを聞いて旅程の変更を余儀なくされたのだった。今回は問題なし。無事にリゾートしらかみに乗車して、ようやく五能線の旅がスタートできた。

リゾートしらかみ

秋田からはまず奥羽本線を北上する。男鹿半島の脇を通りすぎて、八郎潟干拓地に広がる黄金色の水田地帯を眺めながら走っていく。秋らしい雰囲気。前回ここを通った時は雪で真っ白だったので、この眺めが見れただけでも結構嬉しい。風景を眺めつつ車内のフリースペースなども探検しておく。個室風のコンパートメント席はフルフラットにできて長時間の乗車にも良さそうだった。予想に反してコンパートメントには空きがあったので予約しておけばよかったのかもしれない。

八郎潟干拓地の水田地帯

東能代駅に到着してここで方向転換。座席の向きは乗客が自ら回転させるスタイル。リゾートしらかみで海がよく見える席に座りたい場合は、この方向転換を考慮して予約しておく必要がある。そうでないと気づいたら山側の席に変わっていた、なんてことになってしまう。海側に座るならA列の席を予約するのが正解。

次の能代駅ではなぜかホーム上でバスケットボールのフリースローゲームができる。1回でシュートが成功すれば何か景品がもらえるようだったが、自分のシュートは惜しくも入らなかった。五能線では長時間の乗車になるのでこういった気晴らしイベントが間にあるのはありがたい。

五能線の風景

能代駅を過ぎると海岸線に沿ってひたすら北上。風光明媚な場所を通る時は車内アナウンスとともに列車の速度を落としてくれるので、ゆっくり写真が撮れる。この日の海は青く穏やかで、これが日本海とは思えない風景だった。

その後は先頭車のフリースペースで車窓を楽しんだり、有名な千畳敷の写真を撮ったり、車内で行われる津軽三味線の演奏を聴いたりして過ごした。津軽三味線の演奏は1号車で行われるので生演奏が聞きたい場合は1号車の席を選ぶのが正解らしい (ただし生演奏がない日もある)。

リゾートしらかみの前面展望

弘前の手前の五所川原駅でリゾートしらかみを下車。4時間弱の乗車時間があっという間に過ぎる楽しい列車だった。五所川原では駅前にある巨大な格納庫のような建物はなんだ…?と気になりつつ、立佞武多の館に行ってみる。降りる直前の車内アナウンスで知ったのだけど、立佞武多の館でリゾートしらかみの指定席券を見せると入館チケットの割引を受けられるので、駅で指定席券を回収されないようにしておくとよい。

駅から5分ほど歩いて立佞武多の館に到着。立佞武多については「青森のねぶたが縦に大きくなったもの」ぐらいの認識だったが、建物4階相当の高さのねぷたが三基も展示されていてその迫力に圧倒された。こりゃすごい。夏の祭りの時はこの館の巨大シャッターを開けて直接町に繰り出していくというのだから、この祭りもいつか見にこなければと思ったのだった。

立佞武多の館

一通り展示を見て満足し、館の最上階のレストランでしじみラーメン (これまた美味しかった) を食べて駅まで戻る。ここでようやく駅前の巨大な格納庫みたいな建物は立佞武多の保管用ということに気づいた。なるほどねえ。

駅からは津軽鉄道に乗車して金木へ。津軽鉄道、駅舎から何から全てが昭和のまま時が止まっていて不思議な懐かしさを感じる。平日昼間ということで学生が多く乗車していたが、これがなければ完全にタイムスリップした気分になっていたと思う。のんびりとした列車にゆられて25分ほどで金木に到着。

津軽鉄道の駅

金木駅からは10分弱歩いて津軽三味線会館を見学。チケットを買ったら「ちょうどこれから演奏やるので見ていって」とのことだったので見せてもらう。演奏が盛り上がってくるとなぜかステージ上に紙吹雪が舞う演出がシュールで思わず笑ってしまったが、演奏は迫力があってよかった。リゾートしらかみでの演奏もあったし、意図せず津軽三味線を満喫する日になってしまった。

津軽三味線の展示を見て歴史を学んだあとは、すぐ隣にある斜陽館へ。太宰治の生家とのことだが、かなり広く、とんでもない豪邸だった。太宰治の作品は「走れメロス」ぐらいしか知らなかったので、もう少し作品を読み込んでから訪れたらもっと楽しめたのかもしれない。

斜陽館

もう少し色々とめぐってみたい気持ちはあったが、日も暮れてきたので金木駅から津軽鉄道に乗って五所川原に戻る。帰りの列車にはほとんど誰も乗っていなかったというのもあって、五所川原に戻るまでの夕日に照らされた車窓の眺めは妙に印象的だった。次は冬のストーブ列車に乗りに来るかな。

津軽鉄道からの車窓

五所川原からさらに五能線に南下して弘前へ。駅からホテルに向かう途中のイトーヨーカドーで買い出しをしてこの日は終わる。ここのイトーヨーカドーも昨今の流れでまもなく閉店してしまうらしい。

3日目: 大鰐温泉と弘前

この日は特に予定を決めていなかったのだが、五能線の沿線を色々見てまわるのが楽しかったので、前日の夜のうちにリゾートしらかみの指定席券だけ確保して、五能線フリーパスで鯵ヶ沢まで行ってみることにした。

朝早めに弘前駅に着いて指定席券を発券すると、改札前の掲示板には無常にも乗ろうとしていたリゾートしらかみの運休のお知らせが。今回は車両故障によるものでバス代行になるとのこと。鯵ヶ沢での折り返し時間が1時間半以上とれることを見越して予定を組んでいたので、駅員さんに確認すると「バスだと時間が読めない」とのことだったので、鯵ヶ沢行きは今回は諦め。発券したばかりの指定席券は即払い戻しになったのだった。前回に引き続きでリゾートしらかみとの相性はよくないのかもしれない。

さてどうするか。弘前観光もよさそうだけど駅まで来てしまっており、ここからまた戻るのが面倒 (JR弘前駅は中心地から少し離れている場所にある) なので、次の奥羽本線の列車で大鰐温泉に行ってみることにする。9時半前には大鰐温泉に到着。駅からすぐのところにある鰐comeで朝風呂する。露天風呂もあっていい感じ。

鰐come

大鰐温泉、弘前から列車ですぐの場所なのに山に囲まれた静かな場所でよかった。冬はスキーで有名らしい。帰りは JR ではなく弘南鉄道に乗ってみることにして、りんご畑の間をゆらゆらと揺れながら中央弘前駅まで戻ってきた。

中央弘前駅

まだ帰るには少し早かったので、早めのお昼で煮干しラーメンを食べてから、弘前公園まで散歩をする。実はこのあたりは5月にも訪れているので目新しさはないのだが、せっかくなので天守閣のところまで登ってみる。やはり高いところに登るにかぎる。今日もいい天気で岩木山が美しい。

弘前城跡からの岩木山の眺め

帰りは弘前駅まで歩いて、そこから新幹線の乗り継ぎ駅である新青森までリゾートしらかみに再び乗る。帰りの分は運休にはならなかったので切符はそのままにしておいたのだった。新青森からは東北新幹線で東京へ。帰りの車内では太宰治の「津軽」を読みながら帰ってきた。五所川原のあたりをめぐったおかげで話に出てくる地理関係がすっと理解できたし、竜飛岬まで旅をするエピソードは人間味があって実に面白かった。

リゾートしらかみに乗って五能線を楽しむのが今回の旅の主な目的だったが、それ以上に秋の津軽の風情がとても印象的な楽しい旅だった。今回の旅が終わると「秋田や津軽のあたりまで行くことはしばらくないかな」と思っていたが、色々と見てみたい場所がまた増えてしまったので季節を変えてまた遊びに行きたいと思う。ここでは紹介しきれなかった写真は以下のアルバムにまとめている。

Moto Ishizawa

Moto Ishizawa
ソフトウェアエンジニア。ロケットの打上げを見学するために、たびたびフロリダや種子島にでかけるなど、宇宙開発分野のファンでもある。