NASA を築いた人と技術
NASA を築いた人と技術という本を読んだ。現在は増補新装版も出版されているが、安かったのでオリジナルの方を。元々はアポロ計画時代のジョー・シェイというエンジニアについて興味があって読んだものの、NASA や JAXA の組織文化に対する筆者の分析がよくまとまっていて興味深く読めた。
普段仕事をしている中でいくつかの組織を見てきたけど、トップダウンだったり、役割と責任の分担がはっきりしていたり、みんなで協力してやっていこうやという雰囲気だったり、組織文化は様々だ。NASA はアポロ計画を遂行するにあたってどんな組織文化で進めたのかというと、この本の分析によれば NASA の各センターによって組織文化はバラバラだったらしい。
例えば当時のマーシャル宇宙飛行センターは、フォン・ブラウンを中心としたドイツ人技術者同士の信頼関係で成り立っていたし、有人宇宙船センターではジョー・シェイによるマイクロマネジメントに近い形でアポロ宇宙船の開発を進められていたりした。各センターの組織文化は現代でもパターンとしてよく見かけるものだったが、最終的には責任分担を明確にしてみんなで協力してやりつつも、それらを統合する役割を持つ人を置くような形に収束していたのが興味深かった。
当時の NASA はアポロ計画の成功のために、本部から各センターに対して文書やチャートを使った開発管理の手法を導入しようと必死だったが、各センターは開発文化の違いからそれらをなかなか受け入れようとはしなかったという話も面白い。似たような話は現代の開発者にとってもよくあるなと。
自分は組織マネジメントについて体系的に学んだ経験がないので、この本の著者の分析を通じて組織文化のいくつかのパターンに触れられたのはとてもよかった。