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成功が見えてきたFalcon 9の回収

最近の宇宙開発関連のニュースで、NASASpaceFlight.comの記事が面白かったので簡単に紹介します。記事の内容は、SpaceXが開発しているFalcon 9というロケットの第一段がそろそろ回収できるようになりそう、というもの。SpaceXといえばロケットの製造や打ち上げを民間でおこなっている企業として名前を聞いたことがある人も多いかもしれないですね。

さて、ロケットの回収と言われてピンとこない人は以下の動画を見ることをオススメします。これさえ見れば、SpaceXがやろうとしていることがよく分かります。

動画にもある通り、打ち上げに使ったFalcon 9の第一段のエンジンを軌道上で再点火し、切り離した後も制御して着陸させよう、というのがミッションになります。初めてこの動画を見た時は本当にこんなことができるのか?と思いましたが、SpaceXは本当にこれを実現するべく、Grasshopperと呼ばれる試験機を開発してテストを繰り返してきました。GrasshopperはFalcon 9の第一段をシンプルにエンジン1基だけにし、着陸用の脚を付けたような形をしています。テストの様子は動画などで頻繁に公開されており、最新のテストの様子も公開されています。このテストでは高度744メートルまで打ち上げて同じ場所に着陸させていますが、垂直方向の移動だけでなく水平方向への横移動についても以前テストされていました。

さて、記事の話に戻ると、先日のFalcon 9 v1.1 (従来のFalcon 9ロケットの性能向上型) の初めての打ち上げで、実際に第一段エンジンを2回再点火して、制御落下を実施してみたことが紹介されています。制御落下は、最初の点火で9基搭載されているエンジンのうちの3基を点火してブレーキをかけ、2回目の点火で1基のエンジンを再点火して落下を制御する流れとのこと。今回はどちらの点火もうまくいったものの、途中でスピンが発生して、最終的にはよい結果にはならなかったそうです。スピンについては今回は搭載していなかった着陸脚を搭載すれば、フィンのような効果が得られて安定するようで、解決の見込みがあるようです。なお、着陸脚の装着は、来年2月に打ち上げが予定されているISSへの補給ミッション用のFalcon 9でできないかNASAと交渉する予定だそうです。交渉がうまくまとまるとよいですね。

なお、ロケットの回収手順をおこなうと制御落下のために余分な燃料が必要になるため、海上への着陸で15%、地上への着陸で30%、ペイロード重量 (宇宙に打ち上げられるモノの重量) が減ってしまうそうです。例えば重い衛星を打ち上げるような契約では回収手順を実施することができない場合もあるとのこと。30%減はかなりのものですもんね。

SpaceXのCEOであるイーロン・マスクは今回までのテストをふまえて “We have all the pieces necessary to achieve a full recovery of the boost stage.” と語ったと書かれており、いよいよ成功が近づいてきた印象を持ちました。ロケットを着陸させて回収するといった発想は今まで見たことがなく、実現がとても楽しみなので引き続きSpaceXの動向を追いかけたいと思います。

Moto Ishizawa

Moto Ishizawa
ソフトウェアエンジニア。ロケットの打上げを見学するために、たびたびフロリダや種子島にでかけるなど、宇宙開発分野のファンでもある。