寄藤文平の「絵と言葉の一研究」
一緒に仕事させてもらっているリーダーの人と、普通の人がデザインの心得を学ぶにはどうしたらいいのか、というような話をしたことがある。美大出身のデザイナーであるリーダー曰く、デッサンをやってモノの見方を知るのが一番よい、という話だったのだけど、一緒にデザイナー目線で最近面白かったものとして紹介してもらったのが、この寄藤文平の「絵と言葉の一研究」という本。
そもそも寄藤文平って誰?と思う人も多いかもしれないが、東京在住の人なんかは地下鉄でよく見かけた「家でやろう」シリーズの広告を作った人と言えば分かりやすいかもしれない。広告の他にも本の装丁などの仕事もやっている方らしい。本の内容は短く、あっという間に読めてしまうものなのだけど、デザイナーの目線や考え方のヒントみたいなものが多く書かれていて面白かった。中でも「絵」と「言葉」の距離の話は、その考え方にしっくりきた。
文平さんは「僕のやっていることは、ふつうのコミュニケーションを紙の上で再現しようとする試みなのだろう」と書いている。つまり人の声を「文字」に置き換え、表情を「絵」に置き換えて紙の上で表現する、ということらしい。これってどこかで見た話だなぁと思って考えていたら、それがLINEやカカオトークといったスマホのメッセンジャーアプリだったことに気づいた。LINEはもともと文字しかなかったメッセンジャーの世界に、スタンプというより「絵」を取り入れることで、スマホのディスプレイ上にコミュニケーションを再現した。絵文字はもともとあったじゃん、と言われそうだけど、きっとスタンプのほうが絵文字よりもリッチで、コミュニケーションの再現度がより高かったんじゃなかろうか。
この話のあとに「サッカー選手がチームメイトを見ないでパスを出すのに、コミュニケーションの完成形はコミュニケーションの必要がなくなることだ。」とも文平さんは書いている。そうそう。ここ1年ほどコミュニケーションについて考える機会が多かったので振り返ると、言葉でもなく絵でもなく、空気感とか一体感に近い何かを醸し出したら勝ち、みたいなところに行き着くことが多々あった。この本を通じて、文平さんは紙の上でそれを表現したいように見えたのだけど、僕らはこのインターネットの世界でそれを表現する方法を考えねばなぁと、ぼんやり思ったのでした。
話がよくわからない方向にそれた。これ以外の部分の内容も面白かったので、興味があればぜひ。